離婚で貸家を売却|残債・収益性・相場の正しい見方

夫婦関係の変化に伴う不動産売却をスムーズに進めるためのポイント解説



夫婦の離婚を機に、共有していた貸家(賃貸用不動産)の売却を検討するケースは少なくありません。感情的な要素が絡む中で、不動産という高額資産を公平かつ合理的に処分するためには、残債の整理や収益性の把握、市場相場の正しい見方など、専門的な知見が求められます。本記事では、「離婚で貸家を売却」する際に特に留意すべきポイントを、具体的な手順に沿って丁寧に解説します。「適切な判断基準」を押さえたい方に向けた内容です。

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離婚時の不動産売却が抱える特有の課題

  1. 感情的対立のリスク
    夫婦間で所有不動産の売却方針に対して意見が割れると、調整に時間を要します。売却価格やタイミング、税負担の配分など、細かな協議が必要です。
  2. 所有持分の調整
    賃貸用不動産は共有名義になっていることが多く、売却後に発生する代金配分や、抵当権の抹消手続きが複雑化しやすい傾向にあります。
  3. 収益性の評価
    現在の賃料収入と将来の収益見込みをどう見積もるかによって、「売却すべきか保有継続すべきか」の判断が大きく変わります。

これらの問題を避けるためにも、まずは「残債の整理」「収益性の把握」「市場相場の把握」という3つのステップを確実に行いましょう。

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1. 残債の整理:事前に把握すべき借入金額と返済計画

貸家を購入する際に組んだ住宅ローンや事業用ローンは、共有名義で債務を負っている場合があります。売却を進める前に、以下の点を明確にしておきましょう。

  • 現在の残債額の確認
    金融機関に最新の残高証明書を発行してもらい、借入元本の残高を把握します。返済途中での売却となる場合、売却代金からローンを完済できるかどうかが重要です。
  • 繰上返済手数料や違約金の有無
    借入時の契約内容によっては、繰上返済に手数料や一定の違約金が設定されていることがあります。これらのコストも売却計画に織り込む必要があります。
  • 共有者間の債務分担
    離婚協議や公正証書、調停調書などで「ローン負担は妻が6割、夫が4割」などと合意がある場合は、それに基づいた分担計算が必要です。売却代金から完済後、残余金を合意した比率で分配します。

残債が売却代金を上回る「オーバーローン」状態の場合、売却だけでは完済できず、手出し金が発生します。このリスクを軽減する方法としては、離婚協議の際に「一方が自己資金で補填する」「売却時期を後ろ倒しにして賃料収入で返済を進める」などの対応が考えられます。

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2. 収益性の把握:保有継続か売却かを左右する稼働率と利回り

「離婚で貸家を手放すか否か」を判断するうえで、最も重要な要素が収益性の評価です。今後得られる賃料収入と、管理コストや将来のメンテナンス費用を見積もり、その純利回り(実質利回り)を把握しましょう。

  • 想定賃料収入の見積もり
    現在の入居率、近隣の相場賃料、築年数に応じた賃料下落リスクなどを勘案し、実現可能な賃料収入を試算します。空室期間をどの程度見込むかも重要です。
  • 管理・修繕コストの算入
    管理会社へ支払う管理委託料、定期的な大規模修繕の積立費用、修繕・リフォーム費用などを将来的に負担することを前提とします。
  • 税金・保険料の試算
    固定資産税、都市計画税、火災保険料など、不動産保有にかかる税金と保険料を年間コストとして計上します。
  • 純収益利回り(NOI利回り)
    上記すべてを差し引いた「純収益」を、物件の時価もしくは取得価格で割った値が純収益利回りです。一般的に事業用不動産では46%が一つの目安ですが、物件条件や地域特性によって上下します。

「純利回りが低い場合」「空室リスクが高まっている場合」は、売却して手元資金を確保し、別の投資に振り向けることが合理的な選択となるでしょう。一方で、高い利回りと安定的な入居状況が見込めるなら、離婚後も賃料収入を不労所得として活用するメリットがあります。

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3. 相場の正しい見方:売却価格を誤らないための査定ポイント

売れやすい価格設定を行うには、複数の角度から市場相場をリサーチする必要があります。査定を依頼する際のチェックポイントは以下の通りです。

  1. 地域における類似物件の成約事例
    直近半年~1年以内に売買が成立した、築年数や間取り、規模の近い賃貸併用住宅・アパートの実績価格を確認します。
  2. 公示地価・路線価の動向
    国土交通省が公表する公示地価や、国税庁の路線価を地域で比較し、地価の上昇・下落トレンドを把握します。都市部よりも郊外や地方都市の変動は緩やかですが、人口動態の変化が影響を与える点に注意が必要です。
  3. 賃貸需要のエリア特性
    大学や病院、工場団地の近隣では長期的な賃貸需要を見込める反面、過剰供給エリアでは相場賃料が下落しやすくなります。行政の開発計画や再開発エリアも調査しましょう。
  4. 物件固有の要因
    築年数、構造、間取り、駐車場台数、設備仕様(エアコン・バス・トイレなど)のグレード、建物のメンテナンス履歴などが売却価格に影響します。

複数の不動産仲介会社に査定を依頼し、提示価格や根拠の説明を比較検討することが大切です。査定額のバラつきが大きい場合は、根拠データの信頼性や業者の市場分析力をチェックしましょう。

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4. 売却手続きの流れと注意点

  1. 媒介契約の締結
    売却を依頼する不動産会社と専任媒介契約または一般媒介契約を結びます。専任媒介契約は、販売活動が集中的に行われやすい反面、複数業者との併用ができないため、早期売却を優先するかどうかで選択してください。
  2. 販売活動と内覧対応
    インターネット掲載、現地看板、レインズ登録などが主な集客手段です。離婚協議中は内覧時の立ち合い者や説明者をあらかじめ取り決めておくとトラブルを避けられます。
  3. 買付証明書・価格交渉
    買主からの購入申込書や買付証明書を受領したら、価格交渉や引渡し条件(引渡し時期、敷金返還条件など)を協議します。離婚による売却では、諸条件の合意タイミングが離婚条件とリンクするケースもあるため注意が必要です。
  4. 売買契約の締結と手付金の授受
    売主・買主間で契約を締結し、一般的には売買価格の510%程度の手付金を受領します。この後、ローン特約や住宅診断(ホームインスペクション)などの条項が履行されれば、本契約が確定します。
  5. 決済・引渡し
    融資実行日や引渡日(所有権移転登記の日)に金融機関で決済を行い、残代金を受領します。同時に抵当権抹消登記の手続きを進め、所有権を買主に移転します。

離婚協議と売却スケジュールを並行して進める場合は、決済日を起点に債務清算や財産分与の最終調整を行う必要があります。売却代金の配分方法は、公正証書や調停調書等で明確に取り決めておきましょう。

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5. 税務面の留意事項

貸家を売却する際には、譲渡所得税の負担や損益通算など、税務面で確認しておくべきポイントがあります。

  • 譲渡所得の計算方法
    売却価格から取得費(購入価格・付帯費用)と譲渡費用(仲介手数料・測量費用など)を差し引いた金額が「譲渡所得」です。これに長期譲渡所得(保有期間10年以上)か短期譲渡所得(10年未満)かで税率が変わります。
  • 損益通算の可否
    賃貸収入と管理費用などを差し引いた結果、赤字(純支出)が生じている場合、売却益と相殺できるか税務署に確認が必要です。
  • 特別控除の適用
    居住用財産(自己使用)の特例と異なり、賃貸用不動産は特別控除を受けられないため、節税策としては取得費の見積りを正確にして、譲渡費用を漏れなく計上することがポイントです。

税理士への相談により、最適な申告スキームや事前対策を講じることで、想定外の税負担を回避できます。

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離婚を機に貸家を売却する際、「残債の整理」「収益性の把握」「市場相場の正しい見方」という3つの視点を押さえることで、感情論を排した合理的な判断が可能になります。売却の手続きフローや税務面の対策も事前に理解し、離婚協議の合意形成を円滑に進めることで、トラブルを最小限に抑えた売却を実現できるでしょう。

離婚という人生の大きな転換点において、不動産は大きな存在感を放ちます。早期に専門家(不動産会社・税理士・司法書士など)と連携し、情報収集と合意形成に注力することが、安心・安全な資産処分のカギとなります。これらのポイントを踏まえたうえで、ご自身の状況に最適な売却プランを策定してください。

 

ひがの製菓株式会社 不動産部


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小林信彦

部署:不動産部

資格:宅地建物取引主任者 二級建築士

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