貸家と戸建を同時に不動産売却する際の注意点

収益物件と居住用不動産を一緒に手放すときに考えるべき視点



不動産を売却する理由は人それぞれですが、近年ご相談が増えているのが「貸家と戸建を同時に売却したい」というケースです。たとえば、かつて自宅として使っていた戸建住宅と、相続や投資目的で所有している貸家をまとめて整理したい、管理の負担を軽くしたい、将来の資産構成を見直したい、など背景は多岐にわたります。
私たち「ひがの製菓(株)不動産部」が拠点とする筑西市周辺でも、このような同時売却に関するご相談は決して珍しくありません。

一見すると「同じタイミングで売れば効率が良い」と思われがちな貸家と戸建の同時売却ですが、実際には注意すべき点が多く、進め方を誤ると売却期間が長引いたり、思わぬトラブルにつながる可能性があります。本記事では、貸家と戸建を同時に売却する際に押さえておきたい考え方や注意点を、できるだけ具体的に解説していきます。



貸家と戸建は「同じ不動産」でも性質が異なる

まず理解しておきたいのは、貸家と戸建は同じ建物でも、市場から見た評価の軸が大きく異なるという点です。
戸建住宅は、基本的に「これから住む人」が購入者になります。そのため、立地、間取り、日当たり、駐車場の有無、周辺環境といった生活目線での条件が重視されます。一方、貸家は収益物件として見られることが多く、「どれくらいの家賃収入が見込めるのか」「入居状況は安定しているか」「管理の手間はどの程度か」といった投資的な視点が強くなります。

この性質の違いを理解しないまま「まとめて売ればいい」と進めてしまうと、どちらの不動産も中途半端なアピールになり、結果として買い手が見つかりにくくなることがあります。同時売却を検討する場合でも、それぞれを別の不動産として冷静に整理する姿勢が欠かせません。



売却のタイミングを揃えることのメリットと落とし穴

貸家と戸建を同時に売却する最大のメリットは、手続きや意思決定を一度に進められる点にあります。売却活動の開始時期を揃えることで、全体のスケジュールが見えやすくなり、資金計画も立てやすくなります。
しかし一方で、売却の「適切なタイミング」は物件ごとに異なるという現実もあります。

たとえば、戸建は比較的需要が動きやすい時期がある一方、貸家は入居状況や賃貸契約の内容によって、売りやすい時期が限定されることがあります。入居者がいる状態で売却するのか、退去後に売却するのかによっても、買い手の層や価格の考え方は変わります。
無理にタイミングを揃えようとすると、どちらかの物件にとって不利な条件で売却活動を始めてしまう可能性がある点には注意が必要です。



貸家特有の注意点:入居者の存在と契約内容

貸家を売却する際に避けて通れないのが、入居者の存在です。入居者がいる状態で売却する場合、購入者は「オーナーチェンジ物件」として検討することになります。この場合、賃貸借契約の内容、家賃、敷金、修繕の履歴など、確認すべき情報が多くなります。

同時に、入居者の生活に配慮する姿勢も重要です。売却活動中の内見方法や通知の仕方によっては、入居者との関係が悪化し、結果的にトラブルに発展することもあります。
戸建の売却と同時進行で進める場合、どうしても戸建側の話が中心になりがちですが、貸家についてはより慎重で丁寧な対応が求められる点を忘れてはいけません。



戸建売却で見落としがちなポイント

一方、戸建住宅の売却では、「今は誰も住んでいないから簡単に売れる」と思われがちですが、空き家ならではの注意点もあります。
長期間空き家になっている場合、建物の劣化が進んでいたり、管理状態によって印象が大きく左右されます。貸家の管理に慣れている方ほど、「建物はある程度古くても仕方ない」という感覚になりやすく、居住用としての視点が抜け落ちてしまうことがあります。

同時売却を進める際には、戸建については「これから住む人の目線」で見直すことが重要です。貸家とは異なる価値基準で見られることを意識しないと、売却活動の方向性を誤る原因になります。



価格設定を一体で考えないことの重要性

貸家と戸建を同時に売却する際、「合計でいくらになるか」という考え方をしてしまう方は少なくありません。しかし、価格設定を一体で考えることは、かえって判断を難しくします。
それぞれの物件には、それぞれの市場価格があります。貸家は収益性、戸建は居住性という異なる基準で評価されるため、価格の考え方も切り分ける必要があります。

特に注意したいのは、「片方がなかなか売れないから、もう片方の条件を調整する」といった発想です。これは一見柔軟な対応に見えますが、結果として両方の売却条件が曖昧になり、買い手から見て魅力のない物件になってしまうことがあります。



売却活動の進め方と情報整理の重要性

同時売却を成功させるためには、事前の情報整理が欠かせません。登記情報、建築時期、修繕履歴、賃貸契約書など、必要な書類は物件ごとに異なります。
これらを整理せずに売却活動を始めてしまうと、途中で確認事項が増え、話が止まってしまうことがあります。特に貸家については、過去の契約内容や管理状況が不明確だと、買い手の不安材料になりやすい点に注意が必要です。

また、同時に進めるからこそ、優先順位を明確にすることも重要です。どちらを先に売りたいのか、どちらは時間がかかっても構わないのか、といった整理をしておくことで、判断に迷いにくくなります。



地域特性を踏まえた冷静な判断

筑西市周辺の不動産市場にも、地域特有の動きがあります。エリアによっては戸建の需要が安定している一方で、貸家としての需要は限定的な場合もあります。その逆もまた然りです。
このような地域特性を無視して「同時に売る」という前提だけで進めてしまうと、思ったような反応が得られず、売却そのものに対する不安が大きくなってしまいます。

同時売却は、スピードを重視する判断ではなく、「整理のための選択」として考えることが大切です。状況によっては、同時に売り出しながらも、結果的に売却時期がずれることもあります。それを失敗と捉えるのではなく、現実的な結果として受け止める姿勢が求められます。



まとめ:同時売却は「効率」より「整理」を意識する

貸家と戸建を同時に不動産売却する際に最も大切なのは、「一緒に売ること」そのものを目的にしないことです。
それぞれの不動産の性質を理解し、別々に評価し、別々のリスクを把握したうえで、結果として同時に売却を進める。この順番を間違えないことが、不要な混乱やトラブルを避けることにつながります。

不動産は大切な資産であると同時に、管理や判断を誤ると負担にもなります。同時売却を検討する場面こそ、一歩立ち止まり、冷静に全体を見渡すことが、将来に向けた納得のいく選択につながるのではないでしょうか。

 

ひがの製菓株式会社 不動産部


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小林信彦

部署:不動産部

資格:宅地建物取引主任者 二級建築士

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