残債が残る家でも売却できる?不動産業者との相談がカギに

~住宅ローン残債をクリアにして売却成功を目指すポイント解説~



住宅ローンの残債がまだ多く残る状態でも、家を売却することは原則として可能です。しかし、ローン残債と売却価格のバランスが崩れると、いわゆる「オーバーローン」の問題が発生し、代金だけでは残債を完済できず、自己資金の持ち出しや別途資金調達が必要になります。売却後に思わぬ資金ショートやトラブルを避けるためには、売却前から銀行・不動産業者と十分に相談し、最適な売却プランを練ることが何よりも重要です。

本稿では、残債が残った家を売却する際に押さえておくべき基本知識から、相談のタイミングや具体的な手続きの流れ、さらにオーバーローン時の代表的な対策までを網羅的に解説します。失敗しない売却のための留意点を中心にまとめていますので、売却検討中の方はぜひ参考にしてください。


残債がある家はなぜ売りにくいのか

住宅ローンの残債がある物件は、抵当権(担保権)が抹消されていないことが最も大きな制約になります。通常、不動産の売買代金決済時に、売主は銀行へのローン一括返済を行い、抵当権を抹消してから買主へ所有権を移転します。しかし、売却価格が残債を下回る場合、差額分の資金をいかに用意するかが大きな課題となり、場合によっては売主自身の資金計画が破綻するリスクがあります。

また、不動産業者に査定を依頼する段階で「ローンが残っているため売れないかもしれない」と伝えずに進めると、実際に買主が内定した後で資金不足になり、契約が白紙になるケースも少なくありません。売却活動をスムーズに進めるためには、ローン残債の額や返済手続きの見通しを、初期段階で不動産業者に正直に説明し、最適な売却スキームを一緒に作り上げることが肝要です。


まず確認すべき:ローン残高と抵当権の状況

  1. 残高証明書の取得
    売却検討を始める前に、借入先の金融機関から「残高証明書」を取得しましょう。これは、ローン残債だけでなく、直近の利息や一括返済時の正確な返済額(繰上返済手数料を含む場合もある)を示した公式文書です。金融機関によっては発行までに数日~1週間程度要するため、早めの申請をおすすめします。
  2. 登記事項証明書で抵当権を確認
    法務局で「登記事項証明書」(登記簿謄本)を取得し、対象不動産に設定された抵当権の件数や順位を確認します。複数の借入先から別々に抵当権を設定している場合や、住宅ローンとは別の担保権(連帯保証等)が付帯しているケースもあるため、債権者リストを明確にしておきましょう。
  3. 返済条件・手数料の確認
    繰上返済手数料(事務手数料)や、金融機関によって異なる「返済期日の制限」「受付締切日」などを事前に把握しておくと、売却代金決済日のスケジュール調整がスムーズになります。

売却価格とローン一括返済額の比較シミュレーション

  1. 想定売却価格の査定依頼
    複数の不動産会社(できれば地元密着型・大手チェーン両方合わせて3社以上)に机上と訪問査定を依頼し、想定売却価格のレンジを把握します。同じ条件で査定してもらうことで、査定額のバラツキを比較しやすくなります。
  2. 諸費用計算
    売却にかかる主な費用は、仲介手数料(売却価格の3%+6万円)、抵当権抹消費用(登録免許税+司法書士手数料)、印紙税、測量費・境界確定費用(必要に応じて)、リフォーム・クリーニング費用など。これらを売却価格から差し引くと、手取り見込み額のおおよその上限値が算出できます。
  3. オーバーローンリスクの検証
    手取り見込み額からローン残債一括返済額を差し引いて、プラスになるかマイナスになるかを確認します。マイナスとなった場合は、不足分をどのように調達するか(自己資金、つなぎ融資、借り換えなど)を早期に検討しましょう。

オーバーローン時に検討すべき代表的対策

  1. つなぎ融資の活用
    売却代金受領までのつなぎ資金として、銀行やノンバンクが提供する「つなぎ融資」を利用する方法です。手付金・中間金などの支払いに充てた後、売却代金入金時に一括返済します。金利はやや高めですが、短期間で返済する前提であれば資金ショートを回避できます。
  2. 買い替えローン(残債スライド型)
    既存ローンの残債返済と新居購入資金を一本化する「買い替えローン」を検討します。売却代金で一部返済し、不足分を新たな住宅ローンとして借り換えることで、資金移動を一本化できるケースがあります。金融機関の審査次第ですが、スムーズに次の住まいへ移行できるメリットがあります。
  3. 任意売却の選択肢
    借入先金融機関と交渉し、ローン延滞等のリスクがある場合に「任意売却」で売却を進める方法もあります。任意売却は、通常の売却価格より若干低くなる可能性がありますが、競売にかけられるリスクを回避し、売却手続きのコントロールをある程度保持できます。
  4. 自己資金の投入・保証人利用
    家族の預貯金や保証人による連帯保証で不足分をカバーする方法です。ただし、自己資金を使い切ると生活資金や次の住宅購入資金に影響が出るため、資金計画全体を慎重に検討してください。

不動産業者との相談ポイント

  1. 査定根拠の詳しい説明を求める
    値段だけを見るのではなく、成約事例数や類似物件の築年数・広さ・立地差異をどのように調整したのか、査定手法を詳しくヒアリングしましょう。
  2. 残債状況を開示し、資金フローの相談
    金融機関からの残高証明書を共有し、売却代金とローン返済、抵当権抹消費用等を含めた資金繰り表を一緒に作成。つなぎ融資や買い替えローンなどの提案を受けながら、最適な売却スキームを構築します。
  3. 売却スケジュールとリスク管理
    物件状況の整理から広告開始、内覧申込み契約決済引渡しに至るまでの期間を見積もり、ローン返済期日や引越し時期と整合させます。特に夏季休暇や年末年始など繁忙期を避けたスケジューリングが重要です。
  4. 媒介契約の種類選択
    複数社に依頼する一般媒介、1社に絞る専任媒介・専属専任媒介のうち、レポート頻度や専属保証の有無など、自分の希望に合う契約形態を選びましょう。残債がある場合は進捗確認が頻繁に必要なため、報告体制が整った業者がおすすめです。

売却から登記抹消までの手続きフロー

  1. 媒介契約締結
    媒介契約書に必要事項を記載し、広告方法や契約期間、報告頻度などを確認。
  2. 販売活動開始
    ポータルサイト登録、チラシ配布、オープンハウス企画などを実施。
  3. 購入申込・条件交渉
    購入希望者からの申込内容を比較し、価格だけでなく引渡し時期や瑕疵担保責任の範囲なども調整。
  4. 売買契約締結
    手付金の受領、ローン特約の設定、引渡しスケジュールの確定などを行う。
  5. 代金決済・抵当権抹消
    売買代金を受領後、司法書士を通じて銀行ローンを一括返済し、抵当権抹消登記を実施。
  6. 所有権移転登記・引渡し
    抹消登記完了を確認し、登記簿上の所有権移転登記を行った上で、鍵の引渡し・物件引渡しを完了。

税務面の留意点

売却が完了したら、翌年の確定申告期間(216日~315日)に譲渡所得税・住民税の申告が必要です。取得費・譲渡費用には、仲介手数料や抹消登記費用、測量・解体費用、つなぎ融資手数料など、できる限り多くの費用を計上して課税所得を抑えましょう。所有期間が5年超の場合は長期譲渡所得税率(所得税15%+住民税5%)が適用され、短期より税率が低減されます。


住宅ローン残債が残る家の売却は、一見ハードルが高く感じられますが、正確な残債把握複数社比較による査定資金スキームの検討・相談手続きフローの整理税務面の準備という5つのステップを着実に踏むことで、安全かつ納得のいく売却を実現できます。特に不動産業者との早期かつ密なコミュニケーションが成功のカギとなりますので、まずは借入先の銀行と査定業者へ、ローン残高証明書と物件資料を持って相談に臨んでみてください。

 

ひがの製菓株式会社 不動産部


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小林信彦

部署:不動産部

資格:宅地建物取引主任者 二級建築士

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